SCP-2976

SCP-2976 - Hall of the Last King (最後の王の宮殿)
© TheDuckman 2016

Item #: SCP-2976

Object Class: Safe

取扱方: SCP-2976の既知の現存版は全て回収され、サイト-███で財団の収容下に置かれています。全てのコピーは標準的なSafeクラス収容ロッカーに保管します。保管ロッカーの鍵は全て現在の研究主任によって保管され、合鍵が記録のために保安主任の下に預けられます。

SCP-2976はDクラス以上の財団職員に開かれる、読まれる、聞かれる、その他の如何なる形式でも内容を知覚されるべきではありません。SCP-2976を用いる実験は防音対策済みの部屋で実施します。当該SCPの複写物、録音、デジタルスキャン、その他の複製は使用後に即座に破棄します。SCP-2976に曝露した財団職員には直ちにクラスC記憶処理薬を投与し、曝された内容の詳細な記憶を除去します。

財団の外部でSCP-2976に曝露したがまだ感染していない人物には、クラスC記憶処理を施してSCP-2976の証拠を所有下から押収します。感染の第1段階に入っていた人物にも同じ処置が適用されます。第2段階以上に進行していた人物はサイト-███に拘留して個別に対処します。感染が広まっている場合、補遺の特殊手順B-14を参照してください。

機動部隊ラムダ-ベータ(“愛書家”)は、遺品売り立て・オンラインフォーラム・古書店などにSCP-2976のコピーが無いか否かを監視するためにエージェントを派遣しています。MTFラムダ-ベータの主任は現在、特殊エージェントのカイレン・オライリーです。エージェント オライリーによる収容下に無いSCP-2976実例に関する如何なる情報も████████████@███.SCPまで寄せてください。この時、SCP-2976実例の確保は、追跡を見失う恐れが無い限りは試みないでください。

SCP-2976の調査は、現在の研究主任であるケニャーナ・ウラリー博士によって行われます。SCP-2976の実験を希望する研究者は、最低でも2名の適切なシニアスタッフに承認を受けた詳細な実験計画をウラリー博士に提出してください。

概要: SCP-2976はサイエンス・フィクション作家のハロルド・G・タロントが著した“最後の王の宮殿にて”というタイトルの本です。現在消滅したSF系出版社“ビワイルダー・ブックス”によって1932年に出版されたこの本は、主人公トム・ジョンソンの“暗黒大陸アフリカの奇妙な神々の寺院での探検”を綴っています。ストーリーはアフリカ先住民を“野蛮人”と形容し、純粋に主人公に尽くす為だけの役割として女性キャラクターを導入するなど、出版当時の性差別および人種差別的な描写がふんだんに含まれます。作中における“最後の王の宮殿”は、批評家から“ページから飛び出していくようだ”と述べられるほどに、非常に詳細に記述されています。

SCP-2976を読む、(人間または電子音声による)朗読を聞く、他者の音読内容を読唇術で知る、その他の如何なる手法でもSCP-2976の正確な内容を知る行為は感染を引き起こします。Dクラス職員による実験により、第1段階以上に進行した他の感染者が存在する状況下では感染率とその進行が加速する可能性があると判明しています。共に長い時間を過ごした第2段階感染者は感染進行率を少なくとも2倍に増し、第3段階感染者ならば3倍、第4段階感染者は通常の10倍の率で感染進行率を増大させます。単に他の感染者の周りにいるだけでは感染の加速には十分ではなく、SCP-2976についての議論が為されることが必要です。このため、感染者たちは一緒に過ごした時間が電話やインターネット越しであっても感染進行率を上昇させることができます。ストーリーの概要だけであれば感染は起こりません。感染は、以下のように進行する多段階式です。

第1段階: 第1段階の感染者はSCP-2976のストーリー、とりわけ“最後の王の宮殿”に興味をそそられます。感染者はこの“宮殿”が実在の場所に基づいているという確信を抱き、それを見つける、描く、またはそれについての情報を持っているかもしれない人物を探し求める事に余暇を費やし始めます。ステージ1感染者は多くの場合、友人や愛する人々にSCP-2976への興味を持たせ、感染させようと試みます。 “最後の王の宮殿”を普通にWeb検索するだけでも複数の第1段階感染者を割り出せることから、インターネットの普及によって感染者を発見することは容易になったと言えます。この段階の感染はクラスC記憶処理で十分に停止/リセットが可能です。

第2段階: 対象のSCP-2976に対する初期の関心がより明白になります。身の回りの事をする、または何らかの形で生存状態を確保することに費やされていない全ての時間が“宮殿”の追及に向けられます。感染者は時折SCP-2976の複写を作成する、或いはスキャンしてインターネットにアップロードすることを試みます。感染者は“宮殿”の建築様式をより広範囲にわたって詳細に明かすような、鮮やかで強烈な夢を見ると報告しています。全ての感染者が“宮殿”内部の同じ場所を夢に見る訳ではありませんが、観察された各々の場所には基本的なレイアウトおよび間取りを把握するのに十分なほどの重複があります。説明における“宮殿”は異常な構造を幾度となく見せており、規模・細部・建築様式は本質的に非ユークリッド的です ― 壁は床になり、階段は何処にも繋がらず、製図を学んだ経験のある平均的な人間は何かが根本的に間違っていると感じずにはいられません。建物には基本となるテーマがないように思われ、近代・中世・東洋風・ギリシャ風・アラビア風の構造が無関係に組み合わさっています。補遺12-Cを参照してください。この段階の感染はクラスB記憶処理で十分に停止/リセットが可能です。

第3段階: 第2段階の感染から9ヶ月以内に、感染者は約2日間の昏睡状態に陥ります。覚醒時、感染者は自分が“最後の王の宮殿”に招かれて“地上の快楽に耽った”と主張します。全ての感染者は正確にこのフレーズを使用し、次いで過剰なまでの食物・アルコール・薬物・感染者にとって適切な性別の相手との性行為について述べます。この段階に至った感染者は追及に取りつかれた状態となり、仕事や家庭を放棄して、“宮殿”の発見と完全な描写に集中するようになります。この時点で多くの感染者は“宮殿”の完全なレイアウトを得る試みのため、お互いに顔を合わせる事を求め始めます。この段階の感染はクラスA記憶処理で停止できますが、SCP-2976へ曝露すると即座に第3段階が再発症します。

第4段階: 第3段階の感染者が6人以上集まった場合、彼らは共に過ごす1日ごとに50%の確率で第4段階へと至ります。第4段階に突入した感染者は、現実世界において“宮殿”の構築を試み始めます。これをSCP-2976-ベータと呼称します。通常であれば不可能にも拘らず、感染者は軽度の現実改変を起こして建材を適合する形状に歪めるのが観察されています。このようにして作成された構造物内の時間と空間もまた、主として建築に従事する感染者たちにとって有利な形式で歪曲し始めます。第4段階の治療法は存在せず、記憶処理には効果がありません。第4段階感染者は飲食や睡眠も含め、SCP-2976-ベータの構築に取り組むこと以外の全てを行わなくなります。彼らを終了するためにはSCP-2976-ベータから最低でも9m引き離さなければなりません。終了されない場合、感染者は例え道具や建材が存在しなくなった場合でもSCP-2976ベータを構築しようとし続けます。SCP-2976-ベータからの距離が9m未満の際に終了された感染者も作業を続行しますが、四肢切断までであれば身体的外傷を加えることが可能です。第4段階の感染者は、単に話をするだけで他者を第2段階に感染させることが可能です。

事案5.7L以降、保安主任とサイト管理者の両方から許可を得ずに感染者を第4段階に進行させるのは財団の方針に反します。

第5段階: “最後の王”が出現します。この事象は財団が把握している限りでは2回しか起こっていません。最初に発生した事案1.11dはSCP-2976が財団の注意を引く切欠となった出来事でした。事案5.7Lで詳述される二度目の事件は前任の研究主任によって引き起こされました。第5段階感染は、SCP-2976ベータ内部の全ての人間を、感染しているか否かに関わらず、SCP-2976-デルタと呼ばれる単一の実体へと融合させます。これに関しての更なる詳細は事案5.7Lを参照してください。

ハロルド・G・タロントは20世紀初頭の、多作ではあったものの、成功しなかった作家でした。1921年から1928年にかけて彼は31編の物語を自費出版しており、その大部分は当時人気だった“紳士の冒険譚”ジャンルでした。彼の全ての著作は批評家に酷評されています。1932年、彼はSCP-2976を執筆し、自費で出版しました。出版社は小規模かつ虚栄的であり、自分たちが何を印刷しているかを理解していないように思われました。SCP-2976は極め付きの駄作と見做され、出版社の没落を招きました。タロント氏は出版後に失踪し、死亡したと仮定されています。

SCP-2976は、出版から11年が経過するまでは異常性質を示していませんでした。

事案1.11dの後、SCP-2976の全ての現存実例を追跡・収容するために機動部隊ラムダ-ベータが結成されました。現時点では第4段階感染者は7名、第3段階感染者は38名、第1・第2感染者は合わせて100名以上が収容されています。財団の制御外で第5段階の感染が起こったのは1回限りです。

補遺12-C: [画像ファイル破損]

事案1.11d: 1964年6月11日、財団当局は中国政府内に潜入していたエージェントからKeter級の現実性の綻びに関する通知を受けました。エージェントたちは、当時█████ ██████████ ████████████として知られていた政府の一部門が、現在SCP-2976の第5段階感染と判明している実体への攻撃を試みたと報告しました。この部門がどの程度SCP-2976について正確な知識を持ち、如何にしてその異常効果を発見したかの情報は、SCP-2976-ベータの拡散を防止するために彼らが行使した制御下の核爆発によって破壊されました。█████ ██████████ ████████████の生き残りの構成員はベルギー条約5111.37項の下に財団当局へと投降し、現時点で所持していた全てのSCP-2976実例と、残存していた数枚の覚え書きを明け渡しました。

事案5.7L: 1986年7月3日、研究主任ケント・ホルメンはサイト-██で制御下の第5段階感染を起こす権限を与えられました。SCP-2976感染の対象は、単一の格納倉庫型収容セルに閉じ込められた14名のDクラス職員に限定されました。被験者たちはSCP-2976を1日あたり複数回読むことを要求され、感染は6週間かけて第1段階から第4段階へと進行しました。

被験者には当初からSCP-2976-ベータを構築するための建設資材が与えられていましたが、第4段階の感染が始まった3日後、被験者たちがレアメタルや武器などの提供されていない素材を使っているのが観察されました。この時点でホルメン研究主任は現地保安職員による実験の中断を試みました。感染を避けるために保安部隊は防音装備を身に着けていました。にも拘らず、全ての保安部隊構成員はSCP-2976-ベータ入場から11分以内に第4段階の感染者と化しました。

7分後、サイト-██との全ての連絡は途絶えました。全ての記録および通信機器は同時に送信を停止しました。最後の送信内容には、SCP-2976-ベータの建設を阻止するための更なる試み以上に特異な点はありません。

31分後、サイト-██はサイト管理者ジェームズ・ジュリアンの司令コードを用いた電子メッセージを一度だけ送信しました。 “彼はやって来る、頭上に炎を戴いて。宮殿は彼の存在によって完全となる。それだけでは足りない。彼の怒りは私たちの肉体に刻み込まれる。彼は去るだろう。彼は戻ってきた。最後の王に栄光あれ。全てが見出される。私たちは彼を止めている。長くは続くまい。” このメッセージには、明るい光の中に輪郭となって浮かび上がったヒト型実体のぼやけた画像が添付されていました。

サイト-██の遠隔調査により、サイトからは人間、SCPオブジェクト、実験動物などのあらゆる生物が消失していることが判明しました。基部はむき出しの状態で、壁だけが無傷で残されていました。流血の兆候はありませんでした。本来のSCP-2976-ベータを内包していた収容セルは熱による損傷を受けたように思われ、壁は異常性の無い煤で黒く染まっていました。サイト-██は放棄され、セメントで埋め立てられました。

  • 最終更新:2016-06-26 18:33:23

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