魔法のオリエンテーション2


魔法

「おかえりなさい。素晴らしいディナーであったのなら幸いです。いえ... それはどうでも良いことです。私はここに審査員としている訳ではありませんから。」

「では。魔法についてです。」

「魔法を恒常的に行使できるものはタイプブルーに該当します。一般的な言葉で言えば、メイジ、魔女、魔術師、そういったものです。」

「このタイプブルーという用語は、財団が世界オカルト連合から借用したものです。連合は超常能力をもった人型存在を色を使って分類しています。財団の私たちも大抵はグリーンやブルーという彼らの用語を使います。グリーンは現実改変者です。ブルーは魔法使いです。」

「ここに来る前、世界オカルト連合の新人工作員に与えられる'応用奇跡論'、魔法の言い換えですね、それについてのレクチャーの写しを読んだ方もいるでしょう。まだの方はこのセッションの後にそれらの写しに触れることになります。」

「あなた方の上官はあなた方がそれらを読むことを望んでいます。というのも、新人のGOC研修員は今尚それらを読むことから始めているからです。例えその内容が数十年以上前のもので、情報の一部に至っては... わたしは難癖を付けようとしていますね。重要なのは、あなた方は私たちの競争が始まった当初の基礎の半分しか知らないということです。」

「私はもう半分の視点を与えるためにここにいます。あなた方は既に私がかつて蛇の手の一員であったことを知っていますね。」

「後ろの、私が連合の写しに言及した際に手を挙げたあなた?」

「質問の意味が理解できなかった方のために言いますと、彼女は'ホグワーツもどき'について尋ねました。いいえ、彼女はふざけたわけではありません。'ホグワーツ'というのは、おほん、統一奇跡論国際研究センターです。」

「厳密にはホグワーツではなく、より研究に焦点をあてた大学で、ですが... ええ、ある意味では魔法使いのための学校です。皆さんの'魔法使い'の定義によりますが。」

「なぜそれを収容し、閉校させないのか?ええと、私がシグマ-3についてお話ししたことを思い出してください。そう、確かに、私たちはシグマ-3をそのために使う必要はありません。本当の答えは、センターが世界オカルト連合によって他の組織から守られているためです。そこへの攻撃が第三次世界大戦の引き金になると言っても過言ではありません。」

「思い出してもらう必要があるようです。私たちはここにいるのは、確保、収容、保護のためであって、すべてを日向に引きずり出し、地球上のあらゆる超自然的アーティファクトが私たちの所有下にあるか確かめるためではないのです。」

「どちらにせよ、私たちが決めることではありません。O5評議会の命により、センターには干渉しないことになっています。ですが、センターは存在し、超常コミュニティの一部です。いいえ、財団職員が通学できるとは思いません。」

「手とGOCは兵士として数多くのタイプブルーを所有しています。財団はどうかと言えば... 公式には、私たちの同僚にタイプブルーはいません。財団に魔法使いはいないのです。もちろん、あなた方はこれが真実ではないと知っています。ごく少数のタイプブルー財団職員は、そのほとんどがシグマ-3と関係しています。」

「ですが、いったん全部脇に置きましょう。」

<咳払いする>

「皆さんは私がどうやって青色で話しかけているのか知りたいでしょう。」

「ええ、これはそう簡単なわけではありません。ここに来る前にいくつかの儀式を行っているので、私は望んだ時に数回これを行えます。すべて財団での上官の承認を得て ── ええ、私より上の地位の人々はいます、勿論です。私は管理官にすぎないのですから。」

「ポイントは、皆さんのいずれかが行使するであろうありとあらゆる魔法はとても厳重な管理の下で行われるということです。財団から離れ、他の組織に溶け込む必要がある時を除いて。あらゆる魔法の行使は財団の業務として行われます。」

「ディナーの際に質問された方がいましたね。その方は知りたがっていました。なぜ私たちはタイプグリーン ── 現実改変者について話すことはできるのに、タイプブルーについて話すことはできないのか?と。」

「既にお察しの方もいるでしょう。何を隠そう ── この事実を大勢の前で他言することは許されません、もちろん財団の同僚たちの前であっても ── すべての人間はタイプブルーになることができるのです。」

「誰もが魔法使いになれます。誰もが魔法の行使を学べます。皆さんの多くは少なくともそれを学ぶことになります。ほとんどは実を結ばないでしょうが、あなた方のいずれかは魔法使いになれます。」

<咳払いする>

「少し疲れたでしょう。具合の悪そうな方も何人かいますね。すみませんでした。」

「話を戻します。誰もがタイプブルーになれますが、いくつか注意があります。第一にポテンシャルと呼ばれるもののことです。少なくとも、私が手のメンバーであった時はそう呼ばれていました。」

「ごく少数の人間はその遺伝子からポテンシャルを有していますが、人口の99.9%はポテンシャルを持たずに生まれてきます。それから、ガンの発症のように、魔法を会得しうる百万もの要因があります。いくつかは皆さんが考えつくものです。その他にも、あなた方の行い、あるいは社会に馴染まないことが要因になります。ある種の知性も要因になり得ます。そして時には、確たる理由がないこともあります。」

「一般的に、あなた方が魔法使い ── タイプブルーになることを望む時、まず最初に自分のポテンシャルは何であるかを理解します。どのような人生が皆さんに与えられているかということです。運が良ければ、あなた方は自分に合った既存の魔法様式を見つけるでしょう。もしとても運が良かったなら ── つまりは、あなたが既にタイプブルーであるもののそれに気付いていない場合です ── すぐに魔法を使い始められます。そうでなければ、皆さんは自分をよく、長く、しっかりと見つめなければなりません。」

「なぜなら魔法使いになることは困難だからです。それはあなた方から多くの、常人とは異なる何かを奪い去ります。大抵は何らかの犠牲を要求します。」

「質問ですか?どうぞ。」

「いいえ、生贄のことだけを指している訳ではありませんよ。超常コミュニティにおいてさえ、それは社会的に受け入れられている訳ではありません。犠牲という言葉を使う時、私は... 肉体的、感情的、精神的なものを意図しています。それは人によって異なります。」

「なぜ犠牲が必要なのか?それは観点に基づきます。皆さんの観点だけではありません。あなた方に対する、他者の観点です。現実の観点です。それはあなた方に対する世界の見方を変えます。あなた方がどのように宇宙を見て、関わり合うかということです。」

「混乱していますね。分かります。言い換えさせてください。魔法使いになるということは、この世界における自らの形而上的な位置を見定め、改変することに他なりません。」

「これは一時的なものであったり、永続的であったりします。一時的なものは最も易しい部類です。ほとんどの人々はちょっとした作用やまじないを生成することができます。蛇の手のメンバーはよく青い百合の花輪を作ることから始めていました。」

「適切な材料とマインドセットの下で実に複雑な一連の指示を守る時、それは蛇の手の構成員たちと同じように、一時的なポテンシャルを各々の内に生み出します。彼らはそれを花輪の製作と、それらに魔法を付与するために利用するのです。いわゆる異常効果というやつですね。」

「これらの効果は人によって異なります。すべてのタイプブルーが幸運のお守りを作ることはできません。何故なら、幸運を信じていないほとんどの人は確実に失敗するからです。奇妙なことに、何が実際の幸運を作り出すか知っている、本物の統計学者は例外のようです。ポイントは、ある人が何をできて何をできないかということは容易く予測できない、ということです。」

「少しデモンストレーションをしましょう。ここまでで、皆さんは私が青色で話すのを聞いています。他の人ができることを見てみましょう。エージェント・ナヴァロ?」

「何ですって、魔法を披露しなければならないことを誰からも前もって聞かされていない?私が今お伝えしています。やりますか、やりませんか?」

「そう言うと思いました。どうも、彼はエージェント・ダニエル・ナヴァロです。エージェント・ナヴァロは元異常芸術家であり、そして私と同様、タイプブルーです。」

<ムース管理官はエージェント・ナヴァロに一枚の紙きれとナイフを手渡す。>

「いつでもどうぞ、エージェント・ナヴァロ。」

<エージェント・ナヴァロはムース管理官を睨みつける。僅かの間を置いて、ナヴァロはナイフを持ち上げ、芝居じみたジェスチャーで、左の手のひらを端から端まで切りつける。傷口から虹色の炎の爆発が迸る。ナヴァロはその炎を手の中に包み込む。炎はほの暗い部屋の中を渦巻き、回転する。>

「エージェント・ナヴァロはタイプブルーとして生まれました。彼は子供の頃喫煙しようとした際にその才能を発見し... それは普通ではない結果をもたらしました。彼は放浪者の図書館で得られる情報を通じて、血の魔法という局面における自らの才能を見出したのです。」

<ナヴァロは虹色の炎の沸き立つような爆発を更に取り出し、ジャグリングを始める。聴衆の中の数人が喝采を送る。>

「いいでしょう、十分です、ナヴァロ、あなたは所構わず血を絞り出すのですね。席に戻って結構。誰か彼に包帯を。」

「どうぞ、奥のあなた。」

「ええそうです。私は魔法の様式についてお話ししました。ここでエヴァレット・マン博士、私たちといくつかの興味深い奇跡論研究を行った方を引き合いに出しましょう。魔法は魔法 です。連合では一般的に、色相やバックラッシュといった要素を伴う、魔法についての同じような基本的枠組みを教えられています。手はそれより一貫性に欠け、難解な要素を論じる傾向にあります。」

「それはそれは多くの魔法様式がありますが、普遍的なものはほぼありません。誰に対しても作用するような儀式等について話しているのでない限り、魔法の種類ごとに必要なポテンシャルは異なります。とあるヨーロッパの古い異教の様式はあなたに作用するかもしれませんが、ここから50マイルも離れていない場所で生まれた人には作用しないかもしれません。そしてエージェント・ナヴァロのような人々は真に"様式"すら持っておらず、"ただ作用する要素がある"のです。」

「ナヴァロがタイプブルーとして生まれたと言いました。私はタイプブルーとして生まれていません。私は別の方法で魔法使いになりました。」

「私はポテンシャルについてお話ししましたね?ええ、何事かを本格的に為すためには、一時的なポテンシャルでは行えません。永続的なものでなければなりません。それがタイプブルーになるということなのです。」

「ここで、はっきりさせておきましょう ── これは、あなた方が異常人型存在になれるということを意味しています。例え見方によってはほとんど分からないとしてもです。エージェント・ナヴァロと私ですか?異常人型存在です。あなたは、そう、もし私たちが二度と魔法を使わなければ、常人と見分けがつかない、そう言いたいのでしょう?いいえ、それは違います。私たちの... 超常能力の周囲には、メイジであることに結びついたあるタイプの特異な放射が存在します。GOCはこれを可視化して読みとるスキャナーを有しています ── 私たちもできますよ、実際にはね、ですが現場でそれを使うことはまずありません。GOCのカラーコードにおいてこのタイプは青い放射です。それ故に、タイプブルー。」

「ではどうやってタイプブルーになるのか?」

「あなた方は世界に対する観点を変える必要があります。」

「私たちが言及したセンターを知っていますね?GOCに守られた魔法学校のことですよ?彼らはタイプブルーになるための確実で、普遍的で、標準化されたプロセスを特定した者に5000万もの賞金を懸けています。誰もそれを手にしていません。なぜなら、人々の世界における観点を、確実かつ普遍的に変化させる ことはできないからです。」

「世界中のほぼすべての人々が潜在能力を持っています ── ですが、世界中のほぼすべての人々は自らの左手を切り落とすことができます。どれだけの人が実際にそれを行うでしょう?特に何の見返りもなかったとして、それは片目を失わなければならないことをまったく知らなかったせいでしょうか?」

「メイジになるということは必ずしもそれほど酷ではありません... しかし一部の人にとっては、もっと酷いものです。」

「メイジになるための主要な手段は3つあります。その過程を経た一握りはシグマ-3のメンバーに受け入れられます。大半の人々はそうではありません。それが明らかになることを願っています。」

「では簡単な方法から始めましょう。」

「これは単純に魔法と付き合うだけです。ただ魔法に晒されましょう。高いポテンシャルを持った人々、もしくは明らかなタイプブルーたちの中でね。魔法の装飾品を身に付けたり、ちょっとした作用媒体を作成したり。魔術に傾倒した組織か、何らかの不気味な神を信奉するカルトのメンバーになるのもいいですね。」

「大事なのは魔法にどっぷり浸かって過ごすことです。それは放浪者の図書館 ── もしくはタイプブルーであるシグマ-3メンバーと共に過ごす、シグマ-3の訓練施設のような環境です。これは魔法における一つの原則で、今日お話しする範囲を越えたものです。同類は同類に影響を及ぼし、同類は同類を生み出します。」

「十分な期間それを行い、運が良ければ、皆さんはタイプブルーになるでしょう。多くの人々は運に恵まれません。」

「2番目の方法は、最初の方法と並行して、強引かつ徹底的に人として変わることです。他の国へ引っ越しましょう。宗教を変えましょう。何か抑圧された側面が見えたなら、そこから性的指向を上書きしましょう。魔法や記憶処理で精神を直接書き換えましょう。スカリフィケーションとタトゥーが一般的です。子供を産んだり、育てたりしましょう。ええ、親になることでさえ、あなた方のポテンシャルやあなたが何者であるかという本質を変化させます。」

「どちらにしても、何かを捧げるという発想です。犠牲、既に述べましたね。もっとも簡単なのは'あなたが何者であるか'を捧げることです。往々にして、これは最も好ましい選択になります。聞いた印象よりは好ましいものですよ。結局のところ、あなたはより良い人間になるのです。つまりは、魔法を行使できるより良い人間に。」

「極端なところでは、この方式は強大な異常存在と契約を結ぶことを含みます。しかしながら、超常コミュニティにおいてでさえ、こういったことは皆さんが考えているよりも稀です。なぜなら、そうした存在のほとんどは人を食い物にする類のモノだからです。大半は、人間としての価値を余さず与えてしまい、代償として何一つ得ることはありません。」

「しかし、あなたが捧げられるものに本当の限界はないのです。これらは危険な領域です。ある者は身体の部位を、愛する人を、人生の一部を、彼らの未来を捧げるかもしれません... そして場合によっては、そういったものを捧げることが魔法使いに有益な結果をもたらします。ええ、愛する人を捧げることはありません。実際的な観点からも、魔力のために愛する人を捧げる行為にまったく価値はないという事実を皆さんに説く必要がないことを祈っています。」

「3番目にして最後の方法は、世界を変えるか、世界が変わるのを待つことです。」

「超自然的な力を獲得するこれらの方法の中で、これがもっともSCP財団の目的と相容れないものです。はい、愛する人を捧げること以上にです。私たちは正常を保ちたいと考えています。確かに世界はそれ自身が望むままに姿を変えますが、世界が異常な手段によって変化を強いられることを財団は望みません。」

「蛇の手は世界を変えることを強く望んでいます。そして一定の範囲内において、財団にいる私たちのほとんどがそれを認めていることは皆さんには聞き入れがたいでしょうが、彼らは成功しています。正確な数は把握していませんが、50年前よりタイプブルーの数が増加しているのは事実です。10年前よりも増えています。少なくともこの内の一部は、近年の手へ参加する人々の増加に起因すると考えられます。」

「カオス・インサージェンシーもこれを理解しています。これこそ彼らがその望みのままに世界を変えようとする理由です ── そして彼らがカオス・インサージェンシーと呼ばれる 理由です。カートゥーンに出てくるスーパーヴィランの名前などではありません。私が言いたいのは、つまりその名称が、目的の声明でもあるということです。」

「シグマ-3は世界を、少なくともインサージェンシーのようには変革することを望んでいない手の派閥とのみ協力しています。彼らは世界にタイプブルーがもっと増えることを望んでいるのかもしれませんし ── 最終的には虚構が崩壊することを望んでいるのかもしれません ── 私たちはそれを望んでいませんし、その方面で彼らに助力することはできず、そうするつもりもありません。ですが、それでも彼らは世界が健全であることを望んでいるのです。私たちのように。」

「世界には危険な存在がうようよしており、その内のいくらかは人間であったり、人間からかけ離れたモノであったりしますが、いずれも自らの利益のために私たちの世界を変容させようとする野望を持っています。」

「連中は世間にいる存在の中でも最悪の部類であり、私たちを闇の中に引きずり戻そうとしています。ほとんどの場合、彼らは邪悪ですらありません。彼らはアリ塚を模様替えしたいだけなのです。自分が新たな女王として君臨できるアリ塚に。」

「皆さんが少しでも理解を深めていればいいのですが ── このことは私たちがそれらの... モノたちの一部について知っている 唯一の事柄です。そう、彼らはいかなる手段を使っても計り知ることのできない存在なのです。」

「こうした不可知の領域にはまた別の側面があります。それこそタイプブルー関連のあらゆる物事が秘密にされなければならず、財団にいる私たちが魔法使いのカルトにならない究極の理由です。」

「もし財団全体が魔法を採用したら ── もしあらゆる研究員と機動部隊エージェントが魔法の提供する力を、本物の、絶大な力を利用したら ── もしシグマ-3以外の全職員が私のようなタイプブルーとなったら ── 私たちの世界に対する観点は変わるでしょう。そしてそれが起きてしまったら、私たちはもはや現実に対する脅威を抑えられないでしょう。」

「財団にいる全員が、十分なほど高い水準で、アノマリーの周りで時間を過ごしています。私たちはそれらを収容しており、率直に言って私たちではまったく勝ち目のないような存在ですら、科学とコンクリートによって実に効果的に収容しています。私たちの収容手順のほぼ大半は ── 必要不可欠な時を除いて ── 本質的に異常でないもので成り立っています。私たちは科学とコンクリートを信頼していると言えるでしょう。」

「では、私たちがその信頼を止めたら何が起こるか想像できますか?私たちが世界の見方を変えてしまったら?あらゆる財団職員が神秘主義者になったら?」

「それは永久に続く、封じ込めの終焉となり得ます。財団による正常性の維持の終わりです。それから私たちは皆、這い出てきた恐ろしいものどもの為すがままとなり、古き神々や悪魔たちは人類をただ洞穴でたき火の周りに身を寄せ合い、壁に何かを刻むだけの存在に貶めることでしょう。永遠に。」

「あなた方の有用性はこれが真実であるかどうかを変えるかもしれません。ですがこれははっきりさせておきます。あなた方の有用性は、シグマ-3という特殊な環境下でのみ 変化をもたらすことを許されています。もうここにいる誰もが知っているのですから、私はシグマ-3と言います。他の財団職員は誰一人この観点に晒されるべきではありません、さもなければ現実性に対する脅威を収容できないかもしれないのです。」

「これは財団のほとんどの職員が魔法は現実のものだということすら知らない理由でもあります。些細なことに聞こえるでしょう。ですが些細なことが発端となります。たとえば、研究員がウィンガーディアム・レヴィオーサと呪文をかけるのを空想したり、エージェントが非現実的な不幸を続けて被ったり。そしてそれは、クトゥルフは鋼の薄板や石壁の向こうに収容できるという事実を信じられなくしてしまうのです。」

「ですが、私や皆さんの仕事はクトゥルフの収容を維持することではありません。それは残りの財団職員の仕事です。あなた方の仕事は残りの財団職員にはできないことです。あなた方の仕事は他の誰かが知っていて私たちは知らないクトゥルフについての知識を捜し出すことです。」

「私たちは彼らの観点を共有します。残りの財団職員はそうしたリスクを晒せません。」

「このやり方で、私たちは世界を維持し、他の誰にも出来ない方法で財団の主要な任務に務めているのです。」

「最後に質問は?オーケー。沢山手が挙がっていますね。今は一つだけ聞きましょう。」

「あー、はい。そうですね。私がどうやってタイプブルーになったか、皆さんにはお伝えしていませんでした。」

「ええ、詳細を話すつもりはありません。ただ言えるのは、2番目の方法を採ったということです。私は... 犠牲を捧げました。大きな犠牲です。数ある候補の中で、私は確固たる決心の下で意図してそれを行いましたが、絶対にお勧めしません。」

「友人の多くが同じようなことを ── 何人かはより酷いことをして ── そして失敗しました。その経験を生き抜くことができなかった者もいました。そして私は... 私が捧げた物事のいくつかを取り戻すことは決してないでしょう。」

「それが魔法です。それが超常世界です。」

「ですが、今でさえ、私はまだ... このようなことが... 行えます...」

<ムース管理官が小さなオブジェクトを取り出し、彼女の演台に置く。小さな、ムースが象られた小立像。彼女は屈み、それに向かって囁く。>

<一陣の突風が、室内の何処からか吹く。そしてとても大きな、黒いぼやけた人影が聴衆の中にそびえ立つ ── それは天井まで伸びた枝角を生やし、多くの眼を持ち、曖昧な塊の内から石炭が燃えているかのような光を放つ、悪魔じみた姿のムースだ。誰かが悲鳴を上げる。>

<ムースは人を脅えさせる印象が台無しの、枝角を生やしたしかめっ面のカートゥーンに変貌する。そして煙に変わり霧散する。>

<ムース管理官は演台にもたれ掛かり、緊張しているように見える。ムースの小立像は無くなっている。少しして、彼女は微笑む。>

「私がどうやってサイト-19の管理官になったのか分かりましたね。」

「...ジョークですよ。これはほんの... ジョーク。」

「ええ。」

<咳払いする>

「...今日はこの辺にしておきましょう。1時間の休憩の後、ここにいる誰からでも質問を受け付けます。来てくれてありがとう、そして... 別の機会にお会いしましょう。」

  • 最終更新:2016-06-29 23:00:55

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