魔法のオリエンテーション


イントロダクション

「こんにちは。来てくれてどうもありがとう。私を知らない方にお伝えすると、私の名前はティルダ・デヴィッド・ムース博士です。私はサイト-19の管理官をやっています。」

「私がここにいるのは ── 私にとって日常的な言葉を使わせてもらえば ── あなた方に魔法についてお教えするためです。」

「私は名講師ではありません。前もってお伝えしておきます。私に権限があれば、ここには他の誰かが立っているでしょう。では、いくつかの質問から始めましょう。学生時代のように手を挙げてください。簡単なやり方です、でしょう? ── あら。これは... とても沢山の手が挙がっていますね。大丈夫、前のあなたから始めましょう。」

「いいえ、これは機動部隊シグマ-3のオリエンテーションではありません。シグマ-3は存在しない部隊です。'オリエンテーション'はありません。私が考えるに、彼らがオリエンテーションを持つとしたら、その時彼らが作り出したものでやるでしょう。もしあなたがシグマ-3からやってきてオリエンテーションが必要だと考えているなら、あなたの上官は仕事をしていないということです。次の質問は?」

「私はこの種の質問をしないようにと言ったはずですが ── ええ、いいでしょう。彼女は今ここにいる全員がシグマ-3から来ている理由はなぜかと質問しました。最初の答えとしては、全員ではないからです。ええ... あなた方の3分の2以上です。私は最低でも1ダースのタウ-9、本の虫の上位メンバーを確認しています。このプログラムを読んでいる何人かはクリアランス4の研究者ですし、最低でも3人は新しい管理官がいます。そしてさらに幾人かは... 'スパイ'でしょう。誰かは言いません、もちろん。訝しむことを楽しんでください。どっちみち分かりません。」

「財団では、ごく、ごく少数の人々が魔法について知ることを許されています。これは... わたしがこのことについて語ったことのある人数よりも大量です。私は最近起きているすべての事象について推測できますが、監督官はより多くの人々が、ええ... 何が起きているのか知ることを望んでいます。」

「はい、では、質問をどうぞ。── 彼の質問は ── 'シグマ-3'とは正確には何なのか?」

「その件に関しては、私も質問があります。いったいどうしてここにいる全員がシグマ-3が何であるかを知らないのですか?あなた方は資料が送られているはず... ええ、そう、まだ機密解除の段階なのですね。わかりました。話を元に戻しましょう。」

「いいでしょう。私たちが"超常コミュニティ"と呼んでいるものについてから始めることにしましょう。日常的な世界を想像してください。この外、影の中で世界がどのように動いているのか。私は要注意団体がどのようにしてこれに溶け込んでいるかについて説明します。私はあなた方に放浪者の図書館についてお教えします。そして、ええ、シグマ-3についても少しだけ教えるでしょう。その前に、あなた方が私を嫌いになりすぎないように休憩を取ります。」

「あなた方は全員これを知る準備ができていると思います、ですが... 今夜は100名ほどがここに集まっています。これは、財団の構成員の一部です。私たちはこのやり方を続けていきたいと望んでいます。私から聞いたことはすべて、すべて ですよ、このプログラムを読んでいない人間とは話し合わないでください。死の痛みを伴うでしょう。おそらく。」

<咳払いする>

「とうとう、魔法についてお教えする時が来ました。」

「パニックにならないでください。いいえ、幻覚に襲われているのではありません。収容違反は起きていませんし、約束します、あなた方のコーヒーにはドラッグは入っていません。」

「青色の時はごく率直にお話しします。」

「これは私が彼らが"メイジ"と呼ぶものだからです。もしくは、あなたがそうしたいなら、"タイプブルー"... あるいは"魔女"。これは私たちができることの本質です。ええ、そう ── 魔法。ありふれたものですが、それでもなお魔法なのです。」

<咳払いする>

「ですが私はまだ魔法について話すつもりではありません。少し時間をください、それから始めましょう。」

シグマ-3

「いいでしょう。私はあなた方に機動部隊シグマ-3、"書誌学者たち"について話すと言いました。この退屈な名前はわざとです。」

「前置きさせてください。私はシグマ-3ではありません。私は単なる顧問です。数年前、私はあなた方のごく一部をそれに任命しましたが、私はそれ以上のことをしていません。ええ、あなたを知っていますよ、エージェント・ナヴァロ、手を振るのを止めてください。私が言っていたのは、私はシグマ-3にいないので、これは簡略版だということです。」

「シグマ-3は超常コミュニティに直接対処する財団の部隊です。無害な言葉です、最低でも私たちがうまく扱えるなかではこの上なく無害です。間抜けに聞こえるでしょう、ええ。私たちの知らない意味はリークされていません。」

「もともと、30年から40年ほど前、シグマ-3は放浪者の図書館への失敗した侵入に参加していた部隊でした。それはほとんど... 無傷で残っていた唯一の部隊でした。その後、部隊は再編され、O5司令部の指揮下に再び組み込まれました。」

「彼らは準軍事的な部隊ではありません。収容チームでもありません。彼らは私たちの先達者たちの成果なのです。先達者たちは、財団がいくつかの重要なこと ── 世界滅亡についてなど ── に、超常世界から孤立しているという単純な理由から関われないのではないかという意見についてとても、とても懸念していました。」

「図書館への侵入でさえ... 私たちが超常コミュニティの情報源を持ち、部隊か、最低でも彼らのリーダーや作戦立案者たちが、財団が既に把握していた図書館についての知識に触れることを許されていた なら ── 作戦はまったく違ったものになっていたでしょう。」

「その時、図書館への侵入に際し、作戦が始まる前に図書館について聞いた ことのある人間は伴われませんでした。それは高すぎる機密レベルに置かれ、私たちの下には直接的な情報源、そこに入ったことがありどんな場所なのかほんの僅かでも知っている人材は一人もいませんでした。」

「私たちは図書館に入った時、何が起きたのかを未だに解明できていません。侵入した全員の記憶が異なっています。私たちが存在した記録さえ ── 実際の動画記録です ── それぞれはっきりと矛盾するのです。生還者の何人かは出来事すべてを覚えていません。」

「確かなことは、いまだに財団職員が図書館に残され、私たちの手の届かぬ場所に閉じこめられているということです。どんな手を尽くしても届きません。そしてそれが完全に予防できた事象だということも。」

「図書館に話を戻しましょう。」

「私たちは超常コミュニティにいくつかの情報源を持っています。私たちは、超常世界において私たちより大きな影響力を持つ世界オカルト連合との長い協力の歴史があります。私たちは図書館、手、そして'魔法'に関係する超常現象を、より伝統的な方法に基づいて処理するために機動部隊タウ-9 ── 本の虫 ── をも作りました。」

「しかしこれには限界があります。司令部は私たちが耳を必要としていると確信したのです。」

「当初は、シグマ-3は直接超常的な用途に用いられてはいませんでした。近年、これが... 変わりました。この部屋にも、実際に魔法使いになるための訓練を行っているシグマ-3のメンバーがいます。彼らは異常芸術家です。彼らはマーシャル・カーター&ダークや、蛇の手、その他超常的組織との二重スパイです。」

「そして彼らは結果をもたらしています。シグマ-3は数多くの活発で危険なアノマリーを収容しています。これらは有益な超常存在の協力なしには確保できなかったでしょう。私は少なくとも3ダースもの、シグマ-3が直接収容したSCPオブジェクトを知っています。さらにシグマ-3は情報をも得ているのです。」

「私は今夜、それらの大部分の名前を言うことが許されていません。なぜならあなた方の全員がシグマ-3な訳ではありませんし、それをはっきりと知っているわけでもないからです。ですが、私が関わっているSCPから言うなら... シグマ-3はSCP-003、私が初めて割り当てられたSCPオブジェクトについて、遠隔調査活動と同等の情報ソースを放浪者の図書館からもたらし、捜索を援護してくれました。シグマ-3は超常コミュニティとの接触からSCP-472を発見・入手しています。」

「大規模なところでは10年ほど前、シグマ-3は、かのインシデント・ゼロ ── 私たちを壊滅させ、財団の維持と防衛をほとんど不可能にまで追いやった攻撃 ── 以来の大強襲を未然に防ぐ助けとなりました。あなた方にシグマ-3が文字通り世界を守った正確な回数をお伝えすることはできませんが、それが複数回であることは言っておきましょう。」

「代わりに、シグマ-3は他の財団機動部隊とは異なる扱いとなっています。彼らは直接間接問わず超常存在の収容を手助けすることはありません。それが超常コミュニティとの協力下、もしくはそれらのメンバーと共に行われない限りは。」

「ここで多くの人が止まり、騒ぎだします。彼らにとっては、オメガ-7やアルファ-9のような部隊よりもこれはたちが悪いのです。それらの部隊は超常存在を使うもしくは使っていました ── しかしこの部隊はいくつかの超常存在を積極的に収容から匿っています!最悪なことに ── シグマ-3は時折、超常存在を解放することさえあります。」

「これは財団の基本的な理念に反している、と彼らは言います。そしておそらく彼らは間違っています。現在、財団には在野のアノマリーすべてを収容する能力はありません。その時まで、シグマ-3は価値を証明し続けるでしょう。この世界を私たちが守れないとするなら、何が私たちの理念の美点なのでしょう?」

「話を戻します。シグマ-3は、カルティストがクトゥルフを召喚するようなものとして知られているような仕事を行う人々です。概して、彼らの友人や同胞は世界の終わりを望んでいません。ただ彼らは世界の終わりを止めることができないのかもしれない。ですが私たちにはできます。彼らには知識があります。私たちには資源があります。」

「彼らは私たちが看守だとは... ええと、財団のメンバーだとは知らないでしょう。ですがクトゥルフが必要とされた時、彼らは私たちに繋がっている人物を知っている誰かを知っている誰かにそれが伝わるのを気にしません。そして私たちの大きな機動部隊に連絡が入り、何人かの頭が吹っ飛ばされます。これで世界は守られました。」

「クトゥルフが本当に実在していると言いたいのではありません... もしそうであっても、あなた方がそれについて知ることは許されません。これはあくまで一例です。」

「休憩が必要なようですね。20分後に戻ってきて、今度は、ええ、"超常コミュニティ"と呼ばれるものについて話しましょう。」

コミュニティ

「では、'超常コミュニティ'。これは何を意味するのでしょうか?」

「超常コミュニティは、この世界で異常性と共に生きるあらゆる人々から成り立っています。考えられる限りの様々なタイプの人々がそこにはいます。それぞれのコミュニティの人口を総計すると、世界中で数十万人になるでしょう。」

「おそらくあなた方が考えていたよりも多いでしょうが、事実なのです ── そしてこれがシグマ-3が必要であるもう一つの理由です。この人々は皆異常な世界に気づき、多くの場合晒されているのです。彼らの中には、それが日々の生活の一部となっている者もいます。」

「彼らの多くは放浪者の図書館に立ち入ったことがありますし、そのほとんどは図書館について耳にしています。彼らの多くは異常芸術コミュニティと呼ばれるものに関係しています。また多くは世界オカルト連合と蛇の手に関係しています。」

「財団自身でさえ、はるか昔に存在した超常コミュニティに起源を持っています。そういった噂話をいくつか耳にしたことがあるかもしれませんが ── いえ、公式声明ではありません、私はただ噂を繰り返しているだけです。お好きなように受け取ってください。」

「実際どれほどの超常能力者がいるのか?ええ、これには議論の余地があります。目立つ少数の人々は下級のタイプブルーであり、ちょっとした奇術や本から僅かな呪文を修得することができます。メイジ、魔女、魔法使い、予言者、などなど。そういった人々は... ええ、私ですね、財団へ亡命する前の私のような人々です。」

「私たちが彼らを捕まえた場合、大抵はSCPに分類しません。私たちが確保している人々のほとんどはAnomalousアイテムに分類されています。シグマ-3は彼らの多くを扱っているのです。」

「GOIという観点から超常コミュニティを見ると... はい、厳密には、彼らは皆何らかの形で超常コミュニティの一部です。ですが大規模なものは... このスライドを見てください。」

Are We Cool Yet
カオス・インサージェンシー
壊れた神の教会
第五教会
世界オカルト連合
境界線イニシアチブ
マナによる慈善財団
マーシャル・カーター&ダーク株式会社
イスラム・アーティファクト開発事務局
オネイロイ・コネクティブ
サーキック・カルト
蛇の手
連邦捜査局異常事件課

「見ての通り... 彼らの大部分が超常コミュニティに含まれます。A-W-C-Y、インサージェンシー、フィフシスト、そしてサーキシストたちはより... 過激です。厳密に言えは、壊れた神の教会もそうですが、'信者'と呼ばれる者たちは境界線同盟を除いた超常コミュニティを、あなた方が思っているよりは許容しているのです。」

「マナ、境界線、そしてORIAは超常コミュニティ内の'主導者たち'です、あなた方も呼び出したことがあるでしょう。MC&Dはあなた方が考えている通りに ── 超常コミュニティの富裕層はそれに属するか関係しています。そしてオネイロイ... 神だけがオネイロイが何者であるか知っているでしょう、...私は深く考えたくありません。」

「次に、最も巨大な2つの組織があります ── 連合と手です。」

「規模の大きさについては、我々も同様に知られています。GOCもしくはその関連組織に加入していない人々は、私たちを看守と呼びます。しかし連合は'焚書者'と呼ばれています。ですから... まあマシな評価でしょう。」

「インサージェンシーについては ── 財団外の人々はアレと私たちがやっていることを同一視していません。私たちは彼らを... ええ、反乱分子たちを、幾ばくかの道理を弁える全てを抹殺しようと目論む、半ばトチ狂った財団からの離反者と見ています。」

「超常コミュニティはインサージェンシーを、他の何よりもサーキック・カルトに似た運動だと捉えています。世界を作り直すための、強い宗教的な含みを伴った運動にも関わらず、インサージェンシーは無神論を公言しています。彼らは神になりたいのです。理屈の前に破壊ありき、暗黒の神々の降臨を望む輩以上にイカれています。」

「実際には、暗黒の神々を喚び出そうとする者たちでさえ、インサージェンシーを自らとはかけ離れた存在と見なす傾向があります。彼らは一般に"不和の種を撒く者"や"狂人ども"として言及されます。文字通りの死のカルトですら彼らをそう呼ぶことを肝に銘じてください。インサージェンシーは大きな抗争では勝利したことがありませんが、これはおそらく彼らの... いえ、脱線しました。これは機密事項です。」

「それでは手と連合について話しましょう。」

世界オカルト連合は超常コミュニティのビッグブラザーです。彼らは警官であり、処刑人でもあります。彼らは108評議会を有しています。評議会の全加盟組織は何らかの形で異常性を有しており、連合によって私たちから守られています。」

「連合は虚構と呼ばれるものの維持に多くの注意を払っています ── 彼らは私たちと同じように正常性の保持を望んでいます。ですが私たちは超常コミュニティの一員ではありません ── そして彼らも。概して、超常コミュニティにおける地位あるメンバーや上流社会の人々は皆連合に参加しています。」

「彼らは第七次オカルト大戦 ── 第二次世界大戦の頃に起きました ── 後の設立以後、'焚書者'と呼ばれています。彼らは本質的に、超常コミュニティへの敵意ある奪取から生じました。連合 ── ビッグブラザーに加盟するか、さもなければ壊滅させられるのです。」 

「連合のいくつかの要素は図書館に忌み嫌われています... それ以後、彼らは不可思議なやり方で締め出されています。私たちのように。皮肉なことに、最初に図書館と交わった時でさえ、彼らは私たちから得た情報通りに振る舞いました... ですがこれは別の機会に。」

「敢えて言うなら、多くの連合メンバーは彼らが図書館へのアクセスを失ったことについていまだに怒り狂っています。私はこれが連合の活動の多くを弱めたのではないかと思っています。彼らが締め出されたことは、連合を嫌う人々が身を隠すことを容易にしました。そうする必要がある人々は図書館の中へ行けばいいのです。」

蛇の手は連合を陽とした場合の陰です。手は連合全体... ビッグブラザーへの対立運動です。そして超常コミュニティを収容または鎮圧しようという思想とも対立しています。」

「彼らは超常コミュニティの急進的な活動家です... しかし大きな政府同様の形を取らない平凡な人々でもあります。手は参加を望むあらゆるタイプの人間を受け入れます。ですから、そこには多くのまともな人々と多くの死のカルティストが同じようにいるのです。手と過激なコミュニティ、 それからカルト宗教 ── 時折、壊れた神の教会のような本格的な宗教が現れます ── や異常芸術グループといったムーブメントの間には、明らかに多くの重複があります。」

「手に所属するようなタイプの人間は私たちを嫌いがちですが、連合に対する悪感情よりはマシです。なぜなら、私たちは人間を殺そうとしないからです。これはシグマ-3が存在できている理由でもあります。」

「全てを打ち明けましょう。私は蛇の手の構成員でした。私はそこに大学組織を通じて入りました。財団に亡命するまで数年をそこで過ごしました。これで私はタイプブルー ── 魔法使いになったのです。」

「私の信じられないくらい興味深い経歴については質問されても答えられません。ごめんなさいね。次は魔法使いについて少しだけお話ししようと思います。ですが今は、休憩を入れた方が良いですね。」

図書館

「放浪者の図書館とは何か?あなた方のほとんどは聞いたことがあり、知っているでしょう。ええ、図書館です、そして蛇の手が使っていて、私たちは... 使っていません。」

「...まぁそのような所です。」

「放浪者の図書館はこれまでに書かれた、まだ書かれていない、永遠に書かれることのない、ほとんどすべての本を収めている図書館です。」

「私たちはそこの動画をいくつか持っています。映すまで少し待ってください。」

「ええ、もう少し待ってください。では... 話し続けましょう。」

「あなた方に図書館の外観をお見せすることはできないでしょう。私たちの知る限りでは、誰もそれを見たことがないのです。図書館は宇宙の外側に位置しています。"異次元"というのは専門用語ですが、これは適当な説明ではありません。図書館は私たちの世界にはありませんが、私たちの世界と繋がっているのです。」

「あなた方は道を通ってそこに行くことができます。道というのはネットワーク... つまりは、ある場所から別の場所へあなた方を移動させる魔法のポータルのネットワークです。それらは世界中に点在しています。財団はネットワークをいくつか収容していますが、ほとんどはAnomalousアイテムに指定され ── ごく一部のネットワークはSCPに指定されています。」

「図書館とは道の集結点であり、地球上でもっとも大きなものです。図書館に繋がる道は図書館内部の扉に結び付いているので、ドアと呼ばれています。とても単純でしょう。」

「道の利用はそんなに簡単なものではありません。ええ、そういうものもあります。それぞれに作動するためのコツがあります。招いてもらう必要のあるものもあります。儀式を要求するものもあります ── 影にむかってくしゃみをしたり、合い言葉を暗唱したり、妖精と友達になったり、ペットの猫の後をついていったり、羊を殺したり、戸口を通り抜ける時にハーモニカを吹いたり。時に、それらはノックと呼ばれます。」

「道はあなた方がドアとして想像するようなものです。もしくはドアに似たもの。洞窟、アーチ、トラックの後ろ。厳密には、すべての影と鏡は道に成り得ますが、有用な道にはならないでしょう。いくつかは芸術作品の形を取ります ── 私はかつて、まだそうできた頃、図書館へ入るドアとして絵画を使ったことがあります。フロアとフロアの間の廊下の形を取ることもあります。」

「これらはあなた方が考えているよりも一般的なのです。すべての主要な都市に最低でも数個はあります。私たちはごく一部の位置を把握していますが、より沢山の道が存在していることを知っています。」

「もし財団もしくは世界オカルト連合からやってきた誰かが道を使おうとしたら、それは作動しないか、あるいは図書館はそれを... 危険な場所と繋げるでしょう。他の惑星。無益で、有害な土地。宇宙空間。ある報告では文字通り地獄が開いていたそうです ── あなた方が想像したようなものですよ。しかしながら、より一般的な例では、彼らは図書館の書庫へと私たちを通し、私たちを司書へと変えます。」

「これについて説明を ── 動画が見られるようです。」

<動画は森の中を歩く2人の女性と1人の男性を映す。1人の女性はサイズの小さいゴジラのコスチュームを着ている。もう1人の女性はフルプレートアーマーを着ている。男性はプラスチックの炎に覆われた赤いコスチュームを着ている。>

「これはかなり一般的な ── 質問ですか? なぜ仮装しているかって?ああ ── この道は自分ではない何かに仮装することを要求するのです。ですので... コスプレを。ついでに言えば、彼らは財団のエージェントです。私服姿ですがね。あ、いえ... あれらは私服ではないと... 思います。」

「ゴジラはエージェント・ジョーンズです。騎士はエージェント・リュウ。最後の1人は今日ここにいる ── エージェント・ナヴァロです。うーん、燃えさかる衣装を着ていました。みなさんに挨拶してください、エージェント・ナヴァロ。そうしたいんでしょう。」

<動画は3人のエージェントが非常に接近して植わっている2本の木の間を通り抜けるのを映す。彼らが木の間を通り抜けた時、彼らは跡形もなく消えた。動画は中断される。>

「ともかく、彼らシグマ-3の隊員3名は図書館にアクセスすることができます。財団全体では、シグマ-3の隊員のみが図書館に入れます ── 部隊の中でも限られた者たちが。」

「私たちは図書館が、図書館を利用しようとする者とその後援者について知る方法を備えていると考えています。知るのはそれらの現在だけではなく未来についてもです。ええ、図書館は限定的な未来視の能力を持っているようです。どうやってやっているか?私にも分かりません。」

「ところで、これこそシグマ-3が他の財団職員による図書館の人々の収容を手助けしない理由です。もし彼らがそれをすれば、彼らはただ図書館から蹴り出されるでしょう。そして、私たちは世界で最も重要な異常地帯の一つにおける'手掛かり'を失ってしまうのです。」

<動画が再開される。エージェント・ジョーンズ、リュウ、そしてナヴァロは今は普通の服を着て、巨大な広間に立っている。広間は大量の本棚に囲まれ、高さは天井が見えないほど、摩天楼のように高い。廊下には沢山のテーブルと多くの人々 ── 最低でも100名以上。動画が進むにつれ、ロビーの人々は全員が人間ではないことがはっきりしてくる。1人がカメラの前を通り過ぎる ── 顔は青く棘に覆われている。3つの尻尾にそれぞれ本を持った30フィートほどの高さの歩くカーペットが近くのテーブルに座る。>

「これが図書館の大広間です。見かけよりも... ずいぶんと大きいです。この日は比較的空いています ── 大抵はいつでも数百人はいます。そして何千人もが寛いでいます。」

「空間は欺いてきます、図書館の中では。例えば、大広間では、後ろの壁に行くまで半日かかります... その上、通過した距離は少なくとも大陸ほどの規模になります。」

「ああ、これは単なる大広間です。図書館には多くの棟があります。いくつかは小さく ── 都市ほどの大きさです。ここはそこから登ったところです。森の中に建てられた棟もあれば、空が見える棟もあります...」

<動画は続き、エージェント・ナヴァロがローブを着た人型の彫像と会話を試みている。彫像には口がない。左手が、燃えている真鍮のランタンと繋がっている。>

「...あー、はい。あれが司書です。ええ、あれには口がありません。」

「それは司書となることが処罰だからです。大抵は。自発的な司書が少数おり、彼らの外見はとりわけ奇妙です。しかしこの記録では見ることはありません。」

「この口がないのはガイドたちですね。彼らは図書館を案内し... 図書館のルールを守らせます。彼らはとてつもなく恐ろしく ── 実際に1人のガイドが財団の準軍事的な部隊を造作もなく撃退しました。ガイドが収容違反に巻き込まれてしまった、非常に、信じられないほど稀なケースでしたが、被害は甚大でした。しかも彼らは図書館の重要な守備戦力ですらないのです。」

「他の代表的な司書は保管係と従者です。この短いショットの背景に保管係を見ることができます ── 左の大きい机にいます。彼らは椅子に縛り付けられています ── 彼らは脚を持っていません。そしてこのアングルからは見えないでしょうが、彼らには眼がありません。実際彼らは読むのに必要としないのです。そして ──」

<人型の蜘蛛に似た何かがエージェント・リュウの頭上の棚を走っていく。彼女は驚いたようには見えない。>

「──あれが従者です。彼らは直接本を世話します。彼らが地面に触れているのを見たことはありません。」

「あれらはすべて、かつては人間でした。彼らのほとんどはヒトでした。今は、違います。」

「ご覧のように、図書館にはルールがあります。本を傷つけない、本を盗まない、本を時間内に返却する。図書館に危害を加えない。そして図書館にいる者を傷つけない。」

「もしあなた方があまりにも甚だしくルールを破れば、強制的に司書へと変えられるでしょう。そして... はい。財団エージェントたちがまさにそうやって図書館に閉じこめられ、司書の刑を受けているのです。彼らの罪の性質を思えば... 運が良ければ、彼らは数百年で解放されるでしょう。」

「質問に戻ります。いいえ。不運なことに、彼らにしてあげられることはありません。どの司書が誰かさえわからないのです。ああ ── 沢山の質問ですね ── いいでしょう、動画を一時停止します。」

<水の球体に浮かぶ緑表紙の本の山に囲まれた、宙に浮いている壮麗な外見の人魚をエージェント・ジョーンズが口説いているように見えるシーンで動画は一時停止する。>

「いいでしょう。沢山の質問です。その、ワイシャツのあなた、言ってください。」

「シグマ-3を図書館から本を回収するために使えるか?ふむ、いいえ、できません。第一に、図書館はもう私たちに目を ── 比喩的ですが、私はそう見なしています ── つけています。もしそういった計画を練り始めたら、それを真剣に考慮しただけでも、私たちは図書館へのアクセスを失うでしょう。私たちはシグマ-3のエージェントを通した情報に頼るしかないのです。彼らが撮影したり、コピーを取ったりなどしたものに。信じてください、それよりいい方法はないのです。」

「第二に、私はまだ図書館カードについて話していません。」

「本を借り、図書館の外に持ち出す際、図書館カードが必要になります。図書館とあなた方がそれぞれコピーを持ちます。カードにはあなた方の真の名前が魔法の署名で記されます。」

「このことの重大性が分からない大半の皆さんに対し ── 私たちには真の名前を身に付けて仕事をする余裕などありません。どういう訳かと言えば、そのカードを手に入れた者はまるで受け入れられるかのように容易く、あなた方に魔法をかけられるのです。彼らが十分に熟達していれば、あなた方をほとんど好き放題にできます。図書館は確実にそうするでしょう。」

「図書館カードは一定の範囲内での図書館の加護もまた与えます。カード保有者を殺したことこそ、世界オカルト連合が図書館から締め出された理由の一つです ── 彼らは図書館で誰かを直接殺さないだけの分別を持っていたのに、結局殺害を遂行してしまったんです ── すみません、脱線しました。」

「ポイントは、連合が図書館を'不穏分子'の監視に利用し、彼らが図書館を離れた際に処刑したことです。図書館を欺くことはできません。」

「もう一つ注意をしておきましょう。シグマ-3が他の財団職員による図書館を利用するアノマリーの収容を、決して、手伝うことのできない理由です。私たちは死のカルトやその類の者たちをやっつけることができます。連中の狙いは他の図書館メンバーにも及びますし、他の図書館メンバーもそうやって我々を助けるからです。しかし、そういった時でさえ、私たちは注意を払わなければなりません。」

「続けましょう。」

<動画が再開する。ナヴァロ、ジョーンズ、リュウは大量の、終わりのない本棚の前を擦り抜けて中庭へ向かう。野の花が茂る野原の端に、不釣り合いなコーヒーハウスがある。人々は本の山の上にラップトップコンピュータを載せている。リュウは空いている青い"長いす"を快活に指さす。それは人間より大きい、おそらく手足の配置が異なる存在のためにデザインされたようだ。>

「別の質問です ── 図書館にフリーWifiはあるか?ええ、冗談だとは分かっています。ですがその質問はイエスです。図書館はあなた方が考えるようなものはほとんど備えています。生活をまるまる全部図書館で行っている人々もいます ── 彼らは一般的ではありませんが、可能なのです。」

<大きく聳え立つベヒーモスがのしのしと歩く様が映る。竜脚類の恐竜とクラーケンの合いの子のようだ。それの多数の目は矮小なヒューマノイドたちを一人ずつ順番に流れるように睨め付け、図書館の中庭の天辺から発せられる奇妙な光源の一切を覆い隠す。その目はジョーンズ、ナヴァロ、リュウをとりわけ長く見つめながらも巨躯は前進し、その下を潜り抜けるには余りにも小さいアーチ道の向こうへ消えていく。>

「...そしてあれは... 図書館の重要な守備戦力です。これは私たちが侵入した際には現れませんでした。より脅威的なモノです。これは一種の司書と考えられ、誰かがなったものなのでしょう。誰か分かりますか?」

「さほど象に似ていないにも関わらず、彼らは象の神と呼ばれています。おそらくそのサイズからでしょう。」

<3人のエージェントが怪物の見えなくなりつつある尻尾をぼけーっと見ているところで動画が終わる。>

「これが今日までに私たちが把握していることの全てです。覚えておいてください、これら全ては図書館のほんの一部に過ぎません。この領域には地球から簡単にアクセスできます。図書館は彼らが書庫と呼ぶ図書館の内部領域や、私たちのような人型存在が訪れない棟を有しています。」

「図書館に入れるシグマ-3のエージェントの中で、書庫にアクセスできたものはいません。図書館はそこまで私たちを好いていないのです。しかし私たちはそこまで行くことのできる協力者を持っています。ごく僅かです、いいですね。書庫は軽々しく入れるような所ではありません。そこにはマンティコアがいるのです。」

「そして... 書庫は財団が無理やり図書館への道を開いた時、実際に道を違えて辿り着いた所です。奇妙な道、ボイラールーム、根源の守衛、そして... すみません。ちょっと説明するのは難しいです... あの場所の様相は欠けて... 皆さんにはおとぎ話について話しているように聞こえるでしょう。ともかく、言いたいのは、財団が図書館を攻め落とそうとした時に何が起きたのか本当に知っている者はいない、ということです。」

「分かりました。私は本当に、本当に、休憩が必要なようです。ディナーを取りましょう、そして戻ってきたら最後の講義です ── 魔法について。」


  • 最終更新:2016-06-13 20:37:37

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード